止められた

「止められた・・・・」


先に顔をあわした時とはまるで異なる様子でぼそぼそと言っている中で、まず耳に入ったのはこれだった。おっさんの体は一回りも二回りも小さくなったように見えた。発する声に、過去の武勇伝やら災難やらを嬉々と話していた力強さはまるで感じられない。


一体何があったのかを聞くと、



「女の子からのメールをサイトが完全に止めやがった。。。。。」



・・・なんじゃそらと思い、よかったやん、もう悩まされんと、と俺は最初言っていたのだが、すぐさまこれはそんな安直に考えるような話ではないと思い返した。



この一ヶ月近く、おっさんにとって出会い系の女からのメールは、虚構にしてなお実質をもつ、生活の支えだったのだ。


「夕方からぱったりと止まってん。。。昨日また『月曜日ヒマやから会おう』いうのが来てな。うん、連絡はできんよ。でもまた行ったろ思ててん。向こうからのメールが来んかったら、待ち合わせの場所もわからんやろ。。。どうにかせんと、何とか金をつくらんとな。。。もうどないも」


「督促のメールはひっきりなしに来るよ、ほんま。。。。回収会社別に移す言うて」


「携帯の明細も来てびっくりしたよ。。。24000円て、、、、」


「携帯は大してかからんよ。パケ代も定額やから。7000円くらいちゃうか」などと甘い見通しを語っていたので、俺も言っても仕方がないと思いつつも、せやから言うたやろ! などと言ってしまう。今更ながら具体的に色々な支払がいくら残っているのか気になり、まず家賃の催促は来たかとたずねると、明日明後日あたりまでに払うように言ってるとか何とかごにょごにょ言っている。もう埒があかんので、請求書全部用意しろと言い、紙とボールペンを持ち、おっさんの家に行った。


おっさんの家に行くと、ひっきりなしにメールを打っている。何をやっとんのか聞いて画面をのぞくと、サイトにあと1日だけ女からのメールを止めるの待ってくれとお願いする内容だった。そんな醜いことやめてくれと言い、溜まった請求書どもを出してもらった。


「えーと、家賃は1ヶ月分やから30000円と」とメモを取り出したのだが、


「いや、2ヶ月分や。せやから強う催促してくんねん」


・・・おっさんウソついとったんか! 罵倒してたら、「いや、金入った日に不動産屋行ったら休みやってな。それでワシもあん時混乱してたから。。。。。」



ウソをつくな、ウソを!!! やばいだろ、そら。おっさんには既に滞納した前歴が多々あるんやし、、、、10年前、大学生の頃、麻雀、サイコロ、パチスロと負けまくって家賃に手をつけたこともある俺は、言うところの混乱は理解できんことはないのだが、混乱がウソと裏表であったこともまた、大家にえらい剣幕で払うか退去かを迫られた、苦々しい記憶とともに思い出されるのであった。


請求書をすべて書き留め、合計した金額は約10万円であり、あとはCD代5000円に出会い系の後払い分29000円がある。端金とも言いうる額だが、それでも今のおっさんを追い込むには十分すぎる額である。


「最初から1人の人に決めてたら、遊びで色々メール送ってなかったら、もっと早く会えたのに、、、最後の頼みもなくなった。。。。もうどうしたらええやら。。。うん? いや、、現実を考えなあかんのはわかっとる。わかっとるけど、考え出したらもう生きた心地がせんから。。。。」


正直かける言葉が見つからなかった。その時言えたことといえば、「今ならやり直せる」「まず家賃が先決」「家を追われたらそれこそどうにもならん」「まずは城を守ることを考えんと」。。。。当たり前なのである。そんなことは俺なんぞに言われなくともわかってることなのである。当たり前過ぎて、響かないのである。


言葉の欠乏を痛感するとともに、何だか俺まで情けなくなってきた。しかし、おっさんは情けなさも通り越して、抜け殻になりつつあるように見えた。


俺が提示しうる生活再建のルートについて、じっくり話し聞かせるならば、今しかない。そう思った。というより、家賃の問題がここまで切迫しているとは思ってなかったので、最早猶予がないと思った。


俺は自分の部屋に帰り、色々な裏付けとアドバイスを請うため、その筋では最も信頼できる施設職員に連絡をとった。30分彼と話をし、丁重に礼を言った後、俺は再度おっさんの部屋へと向かった。

ネコはよく寝てるってよ

先の日記の後、家を出がけに野菜炒めを携えておっさんの家に行くも、不在であった。晩に帰ってきた時に部屋を見ると明かりがついている。しかし、おっさんの自転車がない。何やってんだろうか。。。


翌日、メシを持って行って事情を聞くと、「だって、帰ってきて明かりがついてないとさびしいな思うて。ネコもおるしな」。ネコは夜目が利くなどとは言わず、話を聞いてると、


「昨日、○○(大きな駅)行ってきたよ。(出会い系のが)おるいうから。うん、自転車でな。やっぱ○○は歩いてる人が違うな。みんな金もってそうやもん。ここらでそんなん見たことないよ」


「待ってても何もすることないしな。そしたら旅行のパンフレット並んでて、ワシ、イタリア行きたい言ってたやろ。ずっと読んでて、話聞くんはタダや思うて店員さんに話しかけてな。フィレンツェ行きたいとか。そしたら向こうもこれはどうですかいうて色んなの紹介してくれたな。あ〜、朋美(1000万の女)とイタリア行きたかったな〜。。。14日からの大エルミタージュ美術館展、楽しみにしてたのに、電車賃もあらへん」


で、メールを送ることもできないままやきもきしつつ、サイト側に何やら交渉のメールを送るくらいで、それも無視され、立ちつくすだけで何事もなく夜遅く帰ってきたのだという。ふと横を見ると、ネコのエサ入れが空になっていた。


「エサももうなくなった。まだおやつが置いてあるからしばらくはいけるけどな」



「今おっさんに何を言っても不毛だ。どっかでまた精神的に追い込まれる場面が来る。その時に今生活のために何ができるかを話してみては」 


−−前の日に相方から受けたアドバイスである。そうなるまで、携帯でもつながらなくなるまで放っておこうと思っていた。勿論、おっさんに貸す金は一文たりとてないが、それでもネコのエサだけはカンパすることにした。



翌日、フリスキーを買って持って行くと、「ありがとう。こんなええのやのうてよかったんよ。ありがとう。○○〜、おにいちゃんがカリカリ持ってきてくれたよ〜、おにいちゃんありがとーって」。ネコは怖がって出てこない。


やれやれ、、、コーヒーでも飲まんかと誘われたが、家に戻って仕事をすると断った。


夕方メシを作っていたら、おっさんがやってきた。おっさんの顔についてはこれまでも疲れただのやつれただの散々書いてきたが、人はどこまで消沈できるのだろうか。か細い声で何やら言っているが、何をそんなやばいことがあったのかと思って聞いていると、それは俺にとってはある意味、意外で、しかし今となっては理解も可能な事なのであった。


今後の生活について話をするのは今がチャンス、そして俺がおっさんから手を引くとすれば、それも今しかない。そう思いながらほとんど何も言わず話を聞いていた。

声をかけ続ける

おっさんはかつては月収数百万を稼ぐトップセールスマンだった。多少いかがわしい会社だったというが、顧客の信用を得て、費用に見あうようサービスに満足してもらえるように、休みも返上して働いていたという。そして働いた後は、部下に気前よくおごり、金を貸し、また夜の女への贈り物も欠かさない。稼いだ金は、そっくりそのまま夜の街に消えていった。


しかし、少し前に足を悪くしてからは思うように働けない状況が続いている。働くことと女のことが全てのようなおっさんには、今の生活は不満が溜まる一方だ。出会い系の前にも、何とかもう一度花咲かそうとじたばた動いていた。だが、思うようにいかない。


自分と同じように苦況にある友人をしばらく泊めていたが、その男はある日おっさんのサイフを持ってどこかへ消えた。また別の友人も金を借りに来て、4万円を渡したが、携帯電話で連絡とろうにも通じない。


街で仲良くなった女の子がメールで「今日中に5万円用意しないとヤクザがやってくる」と言ってくれば、自分の生活費を渡してしまう。数日後メールに書いていたその娘の住所まで歩いて行くも、そこには別の女が住んでいたという。


その度に米とコーヒーだけでしのぐ、そんなおっさんを俺は見てきた。金を貸したこともある。その金は3ヶ月に分けて少しずつ返ってきた。お礼だとタバコ1カートンを置いていった。


助平で見栄っ張りでどうしようもない、だが基本的には義理堅く情にあつくお人好し、そんなおっさんである。



3月5日、午後9時頃にやってきたおっさんの顔は死ぬほど疲弊していた。


「ワシの家のもんいっさいがっさいそのまま置いてるから、それを10万円で買ってここに住むいう人おらんかな」


・・・なんちゅうことを聞いてくるんだ。おってもそんなん勧められるか。俺はそんなこと考えずに、今からでもどうにか生活立て直すことを考えようやと言うのだが、


「もういまさらどうにもならん。とにかく今週末には金を用意せな、大変なことになる。携帯も家賃も今週末までや。家賃は待ってもろうてるからな。。電気とガスも来週止めに来る。それは月末までどうにかなるけど」


「金入った時に携帯でCD注文してもうてんけど、それも払えんやろ。そんな場合やないて? いや携帯見てええな〜思うて。青いとこ押してな。この前佐川の人来たけど、まあ困るやろうし置いといてって。それもあるな」


先の日記でポイントが残ってると書いたが、それは俺の聞き間違いで、あの時既に後払いで29000円分を使い切った後だったのだ。だからおっさんからはメールも送れない。


3月に入って出会い系には、先月の後払い分30000円を込みで、既に10万以上は使ったという。手元にいくらあるのか聞くと、


「銀行に600円くらいあったかな。それおろして2000円かな。ネコのカリカリもあとこんだけや(1日分くらい)。とりあえずまずこれを買うてやらんと。こいつはノラじゃもう生きていかれへんよ。すぐ死んでまうわ。こいつだけはどうにかしたらなな」


「とにかく1人でも見つける。そうせな終わりや。一番探しやすいのはこの人かな。赤のBMW乗ってんねん。これ(写真)。これ最新型やからな。鶴見に住んでるいうからディーラー行って最近これ買った人いませんかと聞けばわかるわ」


「1000万の娘もな、レストランのチェーン店やっとる言うからな。店の名前? わからん。でもな、タウンページで○○店て書いてるとこはチェーン店やろ。それでここかないうて電話するんやけどな、こんな感じの女性店長いませんかって。うん、おらんて」


「ワシはホームレスはできん、そんな男や。あんな生活するくらいなら死ぬ。もう自殺や」


げっそり老け込んだ顔をしながら話すおっさんに俺は、とにかくいよいよ自分はおかしいと思い出したら、俺だけでなくすぐに俺や上の奥さんなど身近な誰かに話しかけるように言っておいた。それはかつて中島らも鬱病に苦しみ自殺願望が出てきた時に、丁度事務所にわかぎえふが現れたおかげで救われたというエピソードを思い出したからだ。また、逐電するんだけはやめてくれと言っておいた。


翌日、俺は隣に住む若奥さんに、内緒事と前置いた上で事情を話し、協力を促した。「そういえば最近一段と元気ないと思ってたんよね」。彼女も快く了解した。


今、俺は毎日、おっさんが失踪してないか、恐々としている。俺がこんなことを日記に書き続けるのも、こんなの書かねば抱えきらんからだ。忙しかろうが、書くことで自分を落ち着かせているのである。とりあえず、今から2日ぶりにメシでも持って声をかけに行こうと思う。どうなることでもないが、ネコにだけまともなメシを食わしておくわけにはいかん。

もうないねん

日曜日の晩に東京から帰ってきた。おっさんの部屋には明かりがついていたので、勝負は空振りに終わったのだろうと思いつつも、それ以外のことが気になるので、翌日おっさんを訪ねると「今銀行と話してんねん。あとで行くわ」。銀行と何を話してるのかはさておき、先週末どうしてたのかを聞くと、あらましはこんなとこやった。


「28日にCカード振り込んでやっとってん。もうばんばん来る。何度も来るから、もう男に飢えとんねん。ワシも断りのメール入れるんやけどな、それでも来んねん。ワシはエッチとかそんなんやのうて、やっぱスポンサーになってくれる人を大事にしたいからな。『もう一人の人と300通メールのやりとりしてます。そんな気はない』て返すんよ。それでも来よるからな」


「探した女もまた来よる。散々探したよと書いて送っても、話そらして返ってくる。それに『いつ来たの?』とか返ってくるからな、こっちは100文字しか送れんちゅうねん。ポイントもないいうのに返事して、、もう相手にしてない。完全に頭から離れてる」


「元スッチー、今入院してんねん。子宮ガンとちゃうか。子宮が痛いいうて。『手術して子どもが生めない体になっても抱いてくれますか』って」


「28日も行ったよ。別の女からメール来たから。夕方から駅行って、茶店入ってコーヒー一杯。2時間ずーっとメール打ち続けてな」


「1000万の人? メール打ったよ。28日? 会えないのわかってるからその日は会える日をまた聞いてな。そしたら風邪ひきよってん。部下がインフルエンザで倒れたからそいつのやる仕事を全部その娘が徹夜でやってたからとうとうダウンしたんやて。こんな体調じゃ会えんて。その娘も泣いてるで。ほんまくやしいって。。生活苦しいって? 言うてるよ。なんて返ってくるか? 『そうなる前に、会いましょう』って」


もう1000万の人に絞ったのと聞くと、


「それともう一人、1000万の人。しばらく連絡してたんやけど、、、また連絡できんようなった」


・・・!?


すでにもう残金数千円なんやと。「もうイったれ〜いうて全部いったった。もうバカついでや」


「もうバカでもいい!!このままやめたらもっとワシバカや思うし、博打で負けて取り返すとかいう問題じゃないし、せっかくここまでやったんやから」


「ほんまワシバカなことしてしもうた。。ほんま家にいても落ち着かんし、ブラーと歩いててな。もうズーッとやってなかったことしてしもうたんよ。久々行ってもうた。。。」


パチンコか。スーパー海物語でも打ったんかと聞くと頷き、「またこれがつかへんねん。なんでや〜〜!! 思うたよ」。


いくらやられたか聞いたら「恥ずかしくて言いとうない」。でも俺が指を2本立てたら、頷いていた。「このままおっても生活あかんの目に見えてるしな〜思うて」。


出会い系にはいくら使ったのか聞くと、どうも既に3万はいかれたようや。


「連れにも電話して、金振りこまさせて、18桁の数字だけ教えてくれって言ってな」


「あそこのリサイクルショップにも服売ってな、アルマーニのシャツが500円て、、、新品やいうのに、あそこのオヤジほんま、、、」


家賃は1ヶ月分払ったようなのだが、電気代、ガス代は払っておらず、携帯代もそのうち問題になる状況だという。米は買ったらしいが一月もつかどうかだという。


「ネコのエサも買うてないからな〜、そう、カリカリな。●●(ネコの名前)ごめんな〜」


ネコもええ迷惑である。「しかし、ほんまネコはよう寝てるわ」。


3月5日、おっさんの手元には数千円と後払いの出会い系のポイント(無論払えない)、そして今後やってくる色々なところからの督促である。


「もうどないもできん。それにな、下の○○のおばはんがな、『何か元気がないね〜』て」。


ほとんどかける言葉もないまま、夕飯の買い物するからと言うて帰ってもらった。これからどうするんだと思うとこなのだが、おっさんの状況はもう、向こう1ヶ月のことを考えるとかいう段階ではなくなってきている。おっさんは、その後また、夜9時ごろ訪ねてきた。疲れた、死ぬほど老け込んだ顔でおっさんが話したことを聞いているうち、俺は背筋の悪寒とともに、本気で誰かに相談せねばと強く思ったのであった

おっさん、再び

昨日、一昨日は、一週間ぶりにおっさんと顔をあわさなかった。静かな日々である。おっさんのことが気にならなかったわけではないが、こんなことにばかり気をまわすわけにはいかんからね。

夕飯にとりかかろうとしてた時に、おっさんが訪ねてきた。調子はどうかと聞くのも不毛なのだが、聞いてみるとこの間のことを疲れた顔で色々と。あらましはこんなとこやった。


「やつれてる? そうな、睡眠時間は短いし、メシ炊くのも忘れるくらいやからな。 ずっと? そう、メールな」

「もう昨日から連絡とってきた娘からメールが来んくなってな。金払わんからサイトに止められてんねん。それで他の娘からえらいメール来てな。もうそんなんは相手にせえへんけど、もうひっきりなしにな」


「メッセージも読めへんねん、その娘らの。今までは見れたのに。他の娘のやつ? 普通に見れる」


「昨日もう一度行ってん。○○駅に。朝9時から。帰ってきたのが1時くらいかな〜。1000万の女? せやのうて別の、そうそう若い娘の方、エロっちいの。自転車で行ってな。1時間くらいかかったかな〜、もう行き道も覚えたで。それで○○小学校の前を、いや前探したんは家。ワシ勘違いしててな、近いんは家やのうて勤め先やったんよ。近くのスーパーに勤めてるいうからどれのことかな〜て。もう探しまくったよ。もうず〜っと。で友だちなんかな、写真見せて。『こういう人がいませんか』て。もう散々探したけど、、結論? 、、、ウソかなと、、まあこの娘はないなと。あんだけ探したんやからね」


「とにかく明日金入るからすぐ入金して、連絡とらな。わかっとる、少しだけ入れるようにするから。それでどれだけメール送れるか? わからん。せやけど最低3000円で、、何ポイントやったかな、、、でも1回400円か800円かかかっとるはずや。それで100文字しか送れんからな、1回で用件伝わらへんねん。そんで今から会おういうときに限ってポイント切れるんや。高すぎる? せやけどこのまんま一人も会えんかったら、ワシはただのアホな男で終わってまう。何としても一人はつかまえんと。そしたら気分的楽なる。もう肉体的にも精神的にもズタズタになる。え、もうズタズタて? そうやな〜」


「督促? 来るよ。せやけど延滞料とか幾らかかってるか具体的に教えろ言うても『わからん』て返ってくんねん。おかしい。せやからこれは脅しやねん。早う振り込ませるためのな」


「いや、とにかく一人は見つけんと、、、さっきの娘? そら言うてることがウソやなと。言うてることは100%、、その娘がほんまにいるか? わからん。五分五分くらいかな〜。この娘、千堂あきほに似てるやろ」


「何とかこの1000万の人だけはつかみたいんよ。その人が一所懸命問い合わせてきとんよ。この娘ほんま悔やんどるんよ。なんであん時仕事ほっぽっても会いに行けなかったかって言うとるわけや。無駄にしたないって。会うだけでも渡したいて言うてんねん。ものすご弱気になっとるよ。週変わると、他の若い女と会ってるんちゃうかて。これが本物やったら相手にしてみれば不安なもんや。ワシ相手の気持ちがわかる、わかってるもん。そんな人いても不思議ないと思うもん。これまで男そっぽ向いて一所懸命働いて、やっと自由になる金ができて、月200万とか使っても使い切れん金もあってな、男もおらんかったらさびしいで。女にしたら。ワシやったらキャバクラ行くわ。女やったらホストクラブしかないやん」


もうええかげんやめて、サークルか何か入って実物の女との出会いを考えて方がええんちゃうかと聞いたら。


「そんなん無理や、もう。いやな、こっち来た時に知り合った女の子もな、パチンコ屋で仲良うなった娘おってな。スナック勤めててその店にも行ったよ。しばらく通ったな。でも今体弱くてな。貯金切り崩してる言うてたな。でもな、その娘とはちょっと性格が合わへんねん」


「昔のお得意さんもな、そう未亡人の。この前倒産したって言うてたな。設計事務所やってたんやけどな。昔彼女の家のこと全部面倒見て、その家も売って今は別の家住んでるて。今目が悪いんやて。網膜剥離ってやつ。。。ワシもその人のこと気に入ってな。冗談で口説いたりもしてたんやけど。もう50過ぎてるかな。その人とやったら結婚してもええ思うてたくらいなんよ。家のことでは数百万使わしたからな。今度はワシが、できればお金作ったら、その病気もワシが治してやりたいねん。全部面倒みてやるって」


「きょうだいにもええ縁談あるから言うて金借りたしな。もう会わす顔もないな〜。きな臭いて言われたんちゃうかて? そんなん二の次や。別に喜びもせんし、どうでもええわいう感じやったわ。ワシはもう一人勝手なことしとる思われとるから」


「昔の同僚なんてほんま恩知らずもええとこや。昔そいつらによう金貸してたんやけどな、踏み倒されることはあっても、ワシが頼んだら相手もせえへん」


「最初始めたんも、別に金やらいやらしいのなんて思ってなかってん。普通にメールのやりとりできたらな思って入ったんよ。そしたらすごいメールがバンバンと来るからな」


「1000万の人かてな、別に全部はいらんて言うてんねん。それ一緒に使おって。それでワシと一緒に事業しよて。別に金だけとちゃうねん。向こうもやさしさがほしいねん」


「明日入金したら、『今日会おう』て送ろうと思うねん。『これこれこうこういう理由でメールが送れませんでした。僕もこのまま続けるのはしんどいです』って。『どうしても僕に会いたければ来て下さい』って。そう送ってみよう思うねん」


・・・もうわかったと。とにかくメシだけは食ってくれ。しかし、砂漠で砂金を探すようなもん、徳川埋蔵金や言うたら、「それでもやる価値ある思うよ。ここまできたら」。


俺は日曜日まで大阪を離れるのだが、その間頼むから無茶だけはすんなよとだけ言って帰ってもらった。


おっさん、再び。明日もチャリで1時間かけて待ち合わせ場所へ。もうここまできたら、気の済むようにやってくれ。


以下、ミクシでのコメント


2007年02月27日 22:05 アビコ

家賃のことだが、とりあえず一ヶ月分は入れておいて、残りは後で払うように言うとのことだ。まだギリギリ踏みとどまってるようです。


2007年02月27日 23:06 きし

涙でますな。アビコも頑張れ。

てかメール一回400円も取るんやーーーー。

いやほんま涙出ます。


2007年02月28日 04:38 アビコ

>きし
明日から大阪を離れます。ちと別のことも考えないとね。彼女が風邪を相当こじらせてるんで、おっさんのことばかり気にかけられないっす。

おっさんは何も知らないわけじゃないんよ。つくづく思うけど、これって人ごとじゃないんだな。言うとおり、「正論」など何の足しにもならん。笑えんし、ほんま恐ろしい。。。


2007年02月28日 12:12 アビコ

今朝、おっさんが貸した1000円ともらいタバコの礼にホープ4箱をもってきました。

うたかたの恋とも形容しがたい

昨日夕方、野菜炒めの皿を返しに来たおっさん。あいさつの最中も携帯が鳴るのだが、着信音が変わってた。


「アビコさん、もう聞きとうない言うてたからね、ワシ韓流にえらいはまってもてよ」。


美しき日々」とかゆうドラマのテーマだという。「もう、見るたびに涙出てしゃーない」んやて。


もう話題にするのもしんどいので、出会い系のことはさておき話をしてても、行き着く先はいもしない女の話。俺の方から「これ話してたらワーワー言うてまうし」とそらし、今日はおっさんのライフヒストリーを聞いていた。以前もまるで聞き取り調査の如く聞いたことがあったのだが、むしろ女よりもおっさんが心を開いてきているのが複雑やった。


おっさんが金が欲しいのは、生活しんどいこともさることながら、事業を興したい夢があるのだ。まだ世にでていないビジネスのアイデアがあるのだと。その話は今まで散々聞かされてきたのだが、その詳細までは教えてくれない。俺も聞きたいとは思わないのだが。。。


「それをやらんことには死んでも死にきらん」


かなり濃厚な話を聞いた後は、やはり女の話に落ち着くわけで、俺は「ともかく、家賃光熱費だけはしっかり払うんやで」と、またおせっかいをやくのであった。それもこれも話の最中、家賃をちょくちょく滞らせると話してたからだ。


「今月ももう手つけてるからな。。」


・・・衝撃やった。俺の想像よりも1ヶ月は早く「おわりのはじまり」が来るのかもしらん。


「月の半ばに(不動産屋から)電話来るよ。でも月末払いますでしまいや。大丈夫やて」


これまでとは事情が違うと思いつつ、とにかく家賃だけは払えと念を押してたら、


「火曜水曜あたりが山や。27と28な。その日に(1000万の女が)会おう言うてきてんねん。新しくレストランオープンさすから、それをワシにまかす言って来てんねん。月100万でて」


おっさんは彼女に見せるように、自分の学歴や資格、特技等々のプロフィールを紙にしたため、また、さすがに裏に他の女の名前が書いているのを見せるのはまずいと思ったのか、例の着信記録を再度清書していた。プロフィールにはなぜか年齢だけは書いておらず、「年よりも心は若い」みたいなことを書いていた。会った頃は確かに若いなと思ったのを覚えているが、それからおっさんは相当歳をとったように思う。この数日でかもしらんが。


「これ見せたら絶対喜ぶて。ほんま、そうよ」


来週おっさんがどんな顔をしてるのか、俺にはもう想像できん。


以下、ミクシでのコメント


2007年02月25日 09:57  きし
家賃…………


2007年02月25日 14:14  アビコ
>きし
不動産屋もからんできそうです。おそろしい。。


ちなみに、口座番号はサイトに教えてない言うてました。ほんまかな。。少しは野菜摂ったのが効いたのだろうか。


俺も経験ありますが、家賃を遅らすことに慣れたら、それはそれで「普通」になっていくんですよね。しかし、今回は今まで以上にキツイみたいですよ。そらそうでしょ。


とにかく次は27日か28日あたりが山場。


そこらあたりであきらめついてほしいのだが、おっさんがやりとりしとる「女」は8人おるからな。。。


一年前くらいに、方眼紙に「売りもの」の設計図をしこしこ書いてたよ。ビジネスも女も何も手が出せない、それを共有できる友人もおらん。おっさんが出会い系なぞ始めたのも、その直前にこのビジネスの話を思い切って旧友にもちかけて、「もう冒険はできん」と言われたことも影響しとるようだ。焦りが焦りを生むんだな。

無間地獄とはこのことか

今朝、ゴミを捨てたついでにZの件について聞こうとおっさんを訪ねてみた。例によってえらいやつれ具合で出てきた。何だか日に日にひどい顔になってきとる。わかばを買いに行くとこだったようで、「もうずーっとボーっとしとる。タバコが切れるとワシあかんねん」。どうでもええことだが、おっさんはマルボロの箱にわかばを入れて吸っている。机の上にはタウンページの切れ端が無造作に置かれている。俺が貸した1000円もこれで底をついたやろね。


昨日会ったときも相当憔悴しとった。


「サイト側がな、『早急に三万振り込まないと回収業者を別に移す』言うてきてな、それで『月末まで待って下さい』て送ったらこれよ。『28日までは待てません』て、それでワシもうどうしょうかって」


俺もまた「もうやめよ」て散々言うたり「どっかに相談しよ」とも言うのだが、おっさんから発せられる言葉は承前のとおりだ。おっさんはサイトに文句言おうと「メールを取りつがん」「会えん」「3時間も待たされた挙げ句、始発まで外にいるはめになった」「会えるよう配慮しろ」等々、句読点のないクソ長い文章を送ろうとしとったけど、程度を見透かされるのがおちやから、せいぜい「待ってくれ」と頼むくらいでやめろと諭しといた。


その後もやってきて、
「それに確信した。ウソやって? いやその逆。彼女はおるて確信した。ワシ自分の身長やら特徴やらを彼女に伝えてたんよ。でもな、今来たメールでは『そんなん知らない』って。やっぱサイトが邪魔してんねん」


「入金の締め切りは24日に延ばしてくれたよ。『こちらもなんとか頑張ってみますので』って。向こうも考えてくれて何とか今は大丈夫になった。借りををつくっとるて? そうやな。いや何とかギリギリまではつながらんとこれまでのが(以下略)。」


「どっかお出かけですか。何時頃帰ってくるの?」


・・・聞いてどうするんだまったく。。。相手にまともにメールも打てず、1000万の女からメールが来た時刻を克明にメモし続ける姿は痛々しすぎる。メモの上には「ともみからのラブコール」てタイトルが。


「『私のメール、ちゃんと見てますか』って来るんや、不安で。これが女の子の心をつかむんや。私はあなたのことをいつも思ってるんですよって。メールがくるたびに前のやつが消えていくやろ? せやからちゃんと来たときにな。おかしいて? そんなことない。こういうのを見たら喜ぶよ」


そのメモの裏には何人もの女の名前と、それぞれが提示する金額が書かれてる。



それで、「日産来た?」と聞くと、「いや、まだ来うへん」。


別にそんなことどうでもええという風情だった。そらそやろ、来てどうなるもんでもないし、今は買えないいう説明すんのもしんどいやろ、そら。


それよりもディーラーの判断だな。別に妄言繰り返すおっさんを諭すでもなく、打ち合わせの約束などにこだわらず、連絡もせずドライに突き放す。。少なくともおっさんはそれで一線を越えることはなかったわけやから、ここは素直にグッジョブと言うべきか。


部屋の向こうからこの間散々聞かされた「オールイン」のテーマが聞こえてくる。


「『今日は給料日です』いうて、今朝からいっぱい来んねん」


以下はコメント欄から


2007年02月23日
14:13
今野菜炒め届けてきました。えらいありがたがってました。


・・・それはええねんけど、
「150万の人がな、『それそのままやと何やから口座番号を教えてくれるなら、半分の75万を送ります』いうてきててな、でもポイントないから教えられへん。せやからワシ、サイトにな、とりあえずこの人にワシの3万含めて10万円をあんたんとこの口座に振り込むように言うことはできますかってメールしたんや。そしたら『できません』て。本人同士のやりとりじゃないとだめやって。せやから今、ワシの口座番号を教えたら、相手に伝えてもらえることはできますかって送ろう思うねん」


・・・「とにかく野菜とってないやろ、それ食ってから考えてみ。それと、口座番号は教えたらあかんよ」


「口座の売買もあるいうからな〜、、本物、本物やねん。他にも100万とか色々来よんねん、、でもお金ほしい〜」